第二回 中国国際輸入博覧会出展レポート
第2回目となる中国国際輸入博覧会が、2019年11月5~10日、上海に新設された世界最大の展示会場「国家会展中心」にて開催された。 米中貿易摩擦のさなか、“世界に向けて中国が輸入に寛大である”ことをアピールする意図もあり、習近平氏肝入りで始まった昨年の第一回目の博覧会。中国全土から80万人が来場し、会期中の成約額は6兆円に達した。 今年は展示面積を2割広い36万㎡(東京ドーム8個分)に拡大し、出展社も大幅に増えた。またフランスのマクロン大統領を始め多くのVIPが来場し、盛大な国家行事となった。 8Kテレビからドローンタクシーまで展示されるこの展示会に中で、昨年同様にジュエリーパビリオンが設置された。昨年は中国の上場企業で翡翠販売最大手の張鉄軍グループと矢野経済研究所/日本宝飾品貿易協会がコラボする形で日本パビリオンを設置。甲府や御徒町など26社の宝飾企業が出展した。 しかし、通常の展示会と違い、国家イベントであるためか、出展方法や会場での販売ルール、関税率などが二転三転し、出展者から「もうこりごり」、「とてもついていけない」との不満が噴出。結果今年は出展を希望しない企業も多く、昨年より10ブース少ない16ブースでスタートした。 今年も矢野経済研究所/日本宝飾品貿易協会がコーディネイト役を務めることとなったが、申し込み時点では第二回目ということで、今年こそ主催者(国家機関)もだいぶ慣れているだろうと安心していた。しかし実際ふたを開けてみると、昨年同様に商品リストの提出や、輸出手続き、夜間金庫、監視カメラの設置など、展示に関するオペレーションが二転三転し、そのたびに日本側は混乱し、手探りで対応する日々が続いた。 加えて会期直前に「今年は販売出来ないかもしれない!?」とのうわさが流れ、16ブースの出展者の一部は脱落し、出展中止を決断した企業も出て来る始末。 しかし会期が始まってみると、昨年よりも格段にスムーズな運営が行われ、結果として売りやすい環境となった。例えば昨年はその場で販売した商品を顧客に渡せず、地方から来場した中国人バイヤーにすら、商品を再び保税倉庫に取りに来るか、着払いで送付するかの選択を迫るしかなかったが、今年は販売した商品をその場で顧客に渡せるようになった。更に、昨年機能していなかった集中レジが今年は設置され、クレジットカードや微信支付(WECHATペイ)、支付宝(アリペイ)などあらゆる支払い方法が使え、スムーズに顧客の清算が出来た。昨年は、購入顧客と一緒にブース担当者がレジに並び、長く待たされたために、その間担当者不在のブースはクローズせざるをえなかったが、今年は1-2分で決済ができて販売ロスが無くなった。また昨年は3日目にようやく販売の許可がでたが、今年は初日から販売することが出来た。まさに雲泥の差である。 出展社の1社である広島県福山市に本社を置く三村時計店は、年初に上海市場の視察ツアーに参加した際に、巨大な中国の可能性を感じて初出展を決断した。同社は香港の展示会どころか国内のBtoB展示会にも出展経験はなく、輸出手続きやブースデコレーションなども手探りの状態であった。しかし結果は出展者の中でトップクラスの売上を上げることが出来た。今まで香港フェアなどのトレードフェアは卸・メーカーの独壇場であったが、地方専門店であっても工夫すれば世界に十分に通用することを証明した意味は大きい。 前述のように昨年より日本からの出展は減ったが、逆に海外パビリオンは増えている。今年新設されたパビリオンはイタリアとタイ。彼らは国を挙げて中国市場への進出をバックアップしており、その存在感と絶好の小間位置により大きな集客と売上を上げていた。 日本の出展者は日本らしさをアピール出来ずに、おそらく来場者も日本の出展者であることを気づかずに通り過ぎた人が多かったに違いない。そのあたりが来年への課題として残った。 また、今年はルイヴィトンやブルガリ、ドルチェ&ガッバーナといった名立たるスーパーブランドが挙って初出展しており、ジュエリーを含むライフスタイル館は、バーゼルフェアのようなハイクラスの雰囲気を醸し出していた。 その意味で、この展示会だけで収支を合わせるというよりも、中国におけるブランディングのステップと人脈作りを目的とした長期的ビジョンにたって考える必要があるだろう。 2020年の第3回博覧会は、出展申し込みにおいて更に早い締め切りが予想される。2020年の展示会も弊社が日本パビリオンの設置に向けて主催者と交渉を進めており、オールジャパンでの出展により更に売れる展示会になると考えている。香港展示会一辺倒だったこれからのビジネスは今後最終顧客である中国大陸の市場を直接攻略する時代が来たのである。